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1.文書鑑定科と心理係
「最近さー、おねーちゃんと連絡が取れないのよー」
ぼやきながら出勤したのは、背の低い地味な女性である。
警視庁の隣、警察総合庁舎の七階にある『科学捜査研究所』。
化粧もせず、黒髪も伸ばし放題、ブラウスとスカートは薄汚れ、羽織った白衣もほころびが目立つ。
去年の秋から科警研で研修を続け、晴れて科捜研に就職した才媛のはずだが、どうにも冴えないずぼらな干物女だ。埃にまみれた瓶底眼鏡を指で持ち上げる仕草がまた鈍臭い。
「身だしなみが悪いなぁ」
返事を寄越した相手は男性だ。だらけた彼女に対してこちらは整った身なりで、髪一本乱さない爽やかさだった。白衣もおろしたてだ。涼しげな目元と高い鼻梁が凛々しい。
「あははー。あたしってば荷下ろし症候群みたいねー」
「荷下ろし……? って、心理学用語だっけ?」
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