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「……彼が居なくなる寸前……仕事で出張する……って言ってた……」
「出張? どこにー?」
「宮崎県……そこで商談があるって……会社の資金繰りのために……私の貯金を借りれば……取引がまとまるって……言うから……私は、お金を下ろして……ああああっ……!」
「あーっもーいーよ喋らないでー。ありがとーね、そっかー宮崎、宮崎ねー……」
姉をいさめがてら、妹は警部に目配せした。
誌崎は黙って頷く。
恒松悠は出張という名目で姿をくらましたのだろう。姉の財産を搾取し、そのまま高飛びして失踪。よくある手口だ。
「では私も宮崎まで飛んでみますかな」
誌崎が渋面で告げた。これで詐欺師の行方を辿れるなら御の字だ。
隣で愴助も首肯する。
「絶対に許せませんね。必ず犯人の尻尾を捕まえて下さい!」
その瞳は怒りに燃えていた。迫真すぎて、芝居がかった大袈裟な義侠心にも映った。
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