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悲呂が暇そうに資料を読んでいたら、思わぬ吉報を届けられた案配だ。
一矢報いた。雪辱を果たしたのだ。悲呂は平らな胸をほっと撫で下ろした。矮躯にわだかまっていた怒りや緊張が抜けて行くのを自覚する。
『容疑者はすでに自供を始めています。容疑が固まり次第、東京に連行する予定ではありますが……ひとまず若社長の一卵性双生児であることは間違いなさそうです』
「あー、やっぱそーなんだ?」
『ほぼ兄の証言通りです。弟は人生に失敗してから、詐欺に手を染めるようになったとのことです。内容が一致しているので、恐らく嘘ではありますまい』
「やったー! ドンピシャじゃーん! ねー愴助くん、聞いて聞いてーっ!」
一人で快哉を上げながら、周囲に首を巡らせた。
電話そっちのけで相棒を探す。まずは彼に伝えたい。喜びを分かち合いたい。
「何だい?」
近くのALSに身を寄せていた彼が、顔を持ち上げた。
鑑定結果に不備がないか、もう一度機材と照らし合わせて最終確認している。報告書には管理官の承認印もすでにもらっていた。あとは捜査本部へ提出するだけである。
愴助と悲呂が二人で成し遂げた、初めての共同作業でもあった。
「とーとーあたしたちの努力が実ったわー! 誌崎警部が、恒松悠を捕まえたみたーい」
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