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「へぇ、そうなんだ……じゃあ詐欺師は馬鹿正直に、宮崎県に雲隠れしてたんだね……」
「んー? どーしたの? せっかくのイケメンが浮かない顔になってるよ?」
「いやぁ、あまりにもトントン拍子に行き過ぎて、逆に拍子抜けって言うか。詐欺師は詰めが甘いよね。もっと引っ張ってくれた方が僕も楽しめたのに……」
「へ? 楽しめたって何がー?」
「あ、こっちのこと。何でもないよ」
「んー? 怪しーなー。愴助くん、あたしに隠してることなーい?」
「まさか。しいて言うなら、この事件が解決したことで、君のお姉さんに会う口実が失われてしまうことかな……」
憂えた瞳で、そっとうつむいた美男子の横顔が綺麗だった。
悲呂は見とれた矢先、彼の真意に気付いて悲しくなる。小さな胸がズキリと痛んだ。
「それってー、あたしのおねーちゃんが好きだからー?」
「まぁね。事件をきっかけに再会した以上、事件が終幕したら会う名目も失われる……」
彼が好きなのは、悲呂ではない。
二人は仕事上の相棒に過ぎない。私生活では――私情では――何一つ接点がないのだ。
「あーあー! 聞こえなーい!」
我知らず耳を塞いでいた。
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