3.姉との過去

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3.姉との過去

 実ヶ丘市民病院は、JR実ヶ丘駅を出て五分とかからない立地にある。  警視庁からは遠いものの、捜査本部のある実ヶ丘署ならば徒歩で通える距離だ。捜査主任の誌崎に打診すると、簡単に連れて行ってもらえた。 「まーあたしは姉妹だから、お見舞いの名目で来院してもいーんだけど」  悲呂はしきりに院内を見物しながら、言い訳をこぼした。  同行する愴助と誌崎は顔を見合わせて、失笑をにじませる。 「勤務時間中に(てい)よく職場を抜け出せればラッキー、というのが本音だろ?」 「あははー。やっぱバレたー?」 「そりゃ判りますよ、ぐーたら心理係さん」割り込む誌崎。「わざわざ警察を伴って来た以上は、仕事であることを忘れないで下さいね」 「はーい」  悲呂の荷下ろしは周知の事実となっていた。どうにも身が入らない体質だが、それでもこうして精力的に動いているのだから、少しくらいは大目に見て欲しいものだ。  白亜の病棟を通り抜け、三人は別棟に踏み入った。  渡り廊下を経て着いたそこは『精神科・開放病棟』と看板が掲げられている。
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