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 この春、大学二年生になった理央は食事に関心がなく、体も大きくならなければオメガが持つ発情期もいまだ迎えられないままでいた。  それは理央が深く傷ついた中学生のときの出来事が原因なのだが、理斗はそんな弟を心配しながらも真逆のことを考える自分がいることを否定できない。もし、自分が理央のように発情期を迎えずにいられたなら理真と自分の人生はこれほどまでに狂わなかっただろう。  人間が男女の性別のほかにバース性を持つようになって百年が経つ。現在ではアルファ、ベータ、オメガと呼ばれる第二次性が存在し、小学生になると検査が行われ、学校や職場には自身のバース性を報告するよう義務づけられた。  ほとんどの人間はベータという一般的な体の構造をした部類に属している。アルファはカリスマ性を持ち、知力体力共に優れ社会的にも成功を約束された性と言われていた。  オメガは男性でも妊娠が可能な体をしており、一定周期で発情してはアルファやベータを惑わすフェロモンを振りまく。アルファの子供を身ごもることがオメガの本能には刻まれているし、アルファにもオメガのフェロモンをいち早く感じ取り孕ませることが本能に刷り込まれている。  人口比率で言えばアルファは非常に少なく、オメガはさらに希少とされるバース性である。
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