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 御厨家の三兄弟は理真だけがアルファで、理斗と理央はオメガだ。弟の理央はともかく、理真と理斗は一卵性双生児であるにもかかわらずバース性のみが分かれていたので、両親以外の周囲の人間はしばしば勝手な解釈で理斗を憐んだ。  今では国の管理体制も整っているため、それほどオメガが蔑まれることはないのだが、昔は発情期を有するオメガはアルファやベータを惑わすと蔑ろにされることも多かったそうだ。いまだにオメガが性的暴行の対象にされる事件がなくならないのも憂慮すべき問題だろう。  また、オメガはアルファやベータに比べると能力や体力が劣るという説も根強く差別されやすい。現に理真と理斗は同じ身長なのに、筋肉のつき方がまったく異なっていた。理真は鍛えた以上にしっかりと筋肉を蓄えることができるのに、理斗はどれだけトレーニングをしても筋肉がつかず同年代のベータの男性に比べるとかなり細身だ。 「……ごちそうさま」  再び理央が小さな声で告げて席を立った。食の細い理央にしては頑張って食べたようだ。食堂を出ていく後姿を見送りながら理斗がグラスの水を口にしていると、理真が急に染谷とメイドたちに下がるように合図を出した。  
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