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「理斗、具合が悪くなったら理央ちゃんを呼びなよ」
食堂を飛び出した理斗を理真は追っては来なかった。代わりにいつもの優しい言葉がかけられる。
しつこく言い寄ってくるくせに、理真は発情期の間は理斗に決して近づこうとしない。もっとも理斗が部屋に鍵をかけて引きこもってしまうことも関係しているのだろうが。
広い家に巡らされた廊下を通り、二階へ続く階段を上がって自分の部屋へと駆け込んだ理斗は扉の鍵をかけた。元々扉についている鍵のほかに、理斗が取りつけた内側からしか開けられないふたつの鍵もためらいなくかける。
呼吸が速くなっているのは走ったせいだけでなく、発情しているからだと自分が一番よく解っていた。
一度発情期に陥ってしまうと、オメガはアルファを求めてセックスすることだけしか考えられなくなっていく。アルファと交われば少しは落ち着くし、それが番なら状態はずっとマシになる。
「冗談じゃない……っ」
理斗にしてみれば発情期の苦しみを晴らすためだけに理真に自分の体を預けることなど救いの欠片にもならない。
抱きたいとは言ってくれているけれど、それは恐らく発情期の度に苦しむ自分を気遣ってのことだ。理真は理斗を愛しているわけではない。何回も何十回も、それこそ何千回も自身に言い聞かせてきた言葉を頭の中で繰り返し、理斗は着ていた服を脱ぎ捨てながらベッドまで歩いていった。
獣のように浅く速い呼吸が嫌で嫌でたまらない。全裸でベッドに倒れ込むと柔らかなシルクの寝具に肌が刺激され、あられもない声を上げそうになった。
「ふ、う……っ。ううっ」
発情期に処理することは必要で仕方がないと解っていても理斗は自身を慰める行為に嫌悪感を抱いている。始めてしまえば我を忘れて没頭するのだが、そんな自分がとても嫌いだった。
触れてもいないのに理斗の中心は緩く勃ち上がり、後孔もアルファを受け入れるために潤いを帯びている。
オメガの男性は妊娠が可能なので、アルファを受け入れやすくするためにも女性のように後孔は濡れる仕組みになっているのだ。
先走りと後孔からこぼれる蜜が理斗の白い太ももを伝い、シルクのシーツにポタポタと落ちていく。
「う、うっ。ん!」
眉を寄せて不快をあらわにしながらも発情期には逆らうことができずに理斗の白い手が震えながら自らの下半身へと伸ばされた。
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