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 理斗の手はぶるぶると震え、途中で何度も引っ込めながら恐る恐る理真の手を取ろうと伸ばすが、どうしても理真の手に触れることができない。 「俺が怖い?」 「ち、ちが……。だって、罪だ」 「理斗、好きになってごめんね。でも放さない」  言い終わらない内に理真は理斗の震える手を握りしめた。反射的に逃げようとする理斗を理真は許さなかった。 「俺の部屋まで歩いて。お願いだから逃げないで」  恐怖で意識をなくしてしまえたらどれだけ楽だろう。喉の辺りが詰まって言葉が出てこないので、理斗は理真の手を握り返すことで従う意志を伝えた。  たぶん自分の顔色は相当悪いのだと思われる。廊下を歩いて階段を上り、二階にある理真の部屋に行くまで理真は何度も理斗を振り返っていた。気を抜くと足がもつれて転びそうになっていたから仕方ないのかもしれない。  長い間入らないようにしていた理真の部屋の前まで来ると理真は繋いでいた手を握り直して扉を開けた。部屋の中からは理真の匂いがして、それだけで理斗はおかしくなりそうになる。入るのをためらう理斗をいつもと変わらない優しい理真の瞳が見つめていた。
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