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 理斗は自分が発情期の最中に自慰を繰り返すはしたない姿を思い出し、必死に頭を横に振って自分を抱きしめようとする理真を押しとどめる。獣のような無様な姿を理真に見せるなんて耐えられなかった。 「駄目……駄目だ。発情期は駄目なんだ」 「どうして? 理斗の可愛いところ見たいよ?」  全然可愛くなどない。発情期下の自分は浅ましく卑しい欲の塊でしかない。  番ったときは互いに幼くて途中からわけが解らなくなっていたので理真には自分の汚らわしい部分を悟られずに済んだ。けれど、今の理真は理斗よりも体つきもしっかりとしていて何より余裕がある。こんな理真に発情した姿など見せたら嫌われてしまうに違いない。 「だって、嫌われ……う、うう……っ」 「理斗? どうしたの、泣かないで? 発情期がそんなに嫌? 理央ちゃんみたいに理斗も怖い?」 「あんなみっともないのは理真に嫌われてしまう。だけど理真がいなくなるのも駄目なんだ……こわ、怖いんだ」  こんな風に泣くのはいつぶりだろう。泣いても発情しても、もう何をしても自分は嫌われてしまうのではないかと思うと理斗は嗚咽を止められなくなった。そんな理斗を理真はそっと抱きしめる。 「怖がりで甘えたがり。変わってないね理斗。おいで、俺が飲ませてあげる」  理真は理斗を怖がらせないように優しく導いてベッドに座らせ、目の前に膝をつくとシートから薬を取り出し口元へと持ってくる。人差し指で唇をなぞられた理斗は暗示にかかったように固く結んでいた唇を開いていた。そこへゆっくりと理真が錠剤を入れて口移しで水を与えてくれる。  薬はしばらく理斗の口内に留まっていた。恐怖で飲み込めないことに気づいた理真がそっと理斗の喉を撫でた瞬間、合わさっていた唇が震えて理斗の喉が鳴る。嚥下したことを確認した理真が心配と嬉しさが半々の表情で理斗の顔をのぞき込むので、恥ずかしさのあまり理斗は慌てて顔をそむけた。 「すぐ効く薬なんだけど、大丈夫そう?」  即効性の薬だと告げる理真の声よりも早く理斗は自身の異変を感じ取り体を縮こまらせる。いつも発情期に入るときにはじわじわと体が熱くなる予兆があるけれど、今は突然火がついたように体温が上昇して勝手に呼吸が速くなった。服が肌に当たる感触すら刺激が強すぎてシャツを脱ぎ捨てたくなる衝動に駆られ、体からは力が抜けていく。
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