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 クリスマスも年末年始も卒業論文に追われて慌ただしく過ぎたが、その甲斐あって理真も理斗も無事卒業を迎えることとなった。  卒業後の進路については、理斗は経営学を学んでいたし理真もマーケティングを中心に勉強していたため、跡取りである理央の補佐が務められるよう英理と透の下で働くことが決まっていた。ただ、この情報は一部の幹部にしか伝わっておらず、理真と理斗が表立って動くことはない。  両親が兄弟で番った理真と理斗を人前には出せないと判断したのも無理はない。罰が下ったとも言えるだろう。  桜が花開き始めた三月、大学の卒業式には間に合わなかったものの、人生の節目なのだからと英理と透が帰国した。  久しぶりに一家が揃うことになったけれど理斗の胸中は複雑だ。理真を受け入れたことを後悔しているわけではないが、両親に話すことはできないし、かと言って理斗は嘘をつくのがあまり得意ではないため顔を合わせにくかった。 「あー、久々の日本! お魚食べたいな。透さん、今夜はお寿司にしない?」 「理真と理斗の卒業祝いなんだ。二人の食べたいものにしよう」  帰ってくるなりスーツケースを放り出してリビングルームのソファにどっかりと腰を下ろした英理が「お寿司、お寿司」と連呼する。メイドが手際よく紅茶を淹れてテーブルに並べていった。 「お前たちは何が食べたいんだ?」  透が向かいに座っている理真と理斗に尋ねてはくれたが、駄々をこねている『お父さん』の姿を見て二人は苦笑いを浮かべる。 「お寿司でいい」 「俺も寿司でいいよ」 「俺のはワサビを抜いてくれ」  執事の染谷と一緒にリビングルームに入ってきた理央が注文をつけてソファに座った。 「理真くんも理斗くんもいい子! やったね、お寿司だ」 「まったく英理は仕方ないな。染谷、夕食には寿司を手配してもらえるか?」  ため息をつく透に染谷が「かしこまりました」とにこやかにお辞儀をし、メイドを伴って出ていく。  しばしの間、紅茶と焼き菓子を味わいながら大学でのことなどを話していたのだが、理真が膝の上で拳を握りしめて意を決したように口を開いた。 「あの、帰国早々で悪いんだけどちょっといい?」
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