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 硬い声に英理と透が怪訝な表情を浮かべた。理斗はなんとなく嫌な予感を覚える。 「……俺と理斗のことなんだけどね」 「うん? 理真くんと理斗くん?」 「あー、その、ちゃんと番として生きてくことになったから」 「おい理真! お前、お父さんたちになんてこと言ってる!」  とんでもない報告をした理真に理斗は悲鳴を上げる。冷や汗が噴き出し指先が氷のようになって震えが止まらない。しかしそんな理真の耳に届いたのは、理真とよく似た話し方をするのんびりとした英理の声だった。 「おお! やーっと理斗くんに好きって言ってもらえたの? よかったねえ!」 「……お父さん?」 「お前たちは兄弟だから子供は難しい。避妊はしっかりしろ」 「……父さん?」  状況が解らなくなった理斗はリビングルームに集っている家族をぐるりと見回す。英理も透も普段通りで、理真は少し照れたような顔をしているだけだった。理央に至っては無表情でスマートフォンを見ている。  理斗は血の気が引いて倒れそうになりながらも英理と透へ向き直った。 「俺たちが嫌になって日本を出たんじゃないのか!?」  それは理斗の中に長年わだかまっていた後悔とやるせなさ、寂しさと悲しさ、そして憤りが混ざり合った言葉だ。  感情的になっている理斗を目の当たりにした英理と透は少し驚いた様子だった。しかし、すぐに理斗の気持ちを察したらしく英理が穏やかな笑みを浮かべる。 「あのね、長男と次男が番になったんだよ? それなりにやらなくちゃいけないことあるでしょ?」  かたわらの透も大きくうなづいて同意した。 「海外に支社を増やしておけば、世界中のどの国でもお前たちが安全で自由に暮らせる」 「番だってバレて困ったら、違う国に移動すればいいしねえ」 「そのために事業拡大していただけだ。なぜ理真と理央は教えていないんだ?」  理斗はぽかんと口を開けて固まってしまった。どうやら知らなかったのは自分だけだったらしい。 「理真兄が教えるなと言った」 「だって自力で口説き落とさなきゃカッコ悪いじゃん!」  理央と理真の声が遠くに聞こえてしまうくらいには理斗はショックを受けていた。
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