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「理央くん『朔』って誰かな?」  英理は頬を引きつらせながら理央に尋ね、英理の横にいる透も真剣な表情で理央を見つめている。訊かれた理央はさらりと答えた。 「朔は俺の番だ」 「ああそう。番ね……番!?」  叫んでから背もたれにぐったりと体を預けた英理は完全に許容を超えてしまったらしい。そんな英理とは対照的に透は理央に駆け寄って抱きしめる。 「理央、よかったな。おめでとう! 本当によかった」 「ありがとう。理真兄と理斗兄がたくさん応援してくれたんだ」 「そうか。今度きちんと紹介してくれ」 「もちろんだ。朔もあいさつしたいといつも言っている」  透と理央が話している姿を理斗は理真に抱かれたまま見つめていた。理真は往生際悪く複雑そうな顔をしているけれど、最近は以前のように朔をいじめることも少なくなっている。それなりに朔を認めているのだろう。  そんな四人の耳にグスッと鼻をすする音が聞こえた。 「うう、理央くんが、理央くんが……」  ボロボロと涙をこぼしている英理を見た理真が気まずそうに横を向いたのが理斗にはおかしくてならない。 「どこかで見た光景だな、理央」 「ああ。理真兄と同じだ」 「理真もやったのか。本当に恥ずかしいところが遺伝したんだな」  透の言葉に笑いながらも、理真をクリアしたとしても英理が待ち構えている大川朔に理斗は心から同情した。
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