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***  馴染みの寿司屋に届けてもらった握り寿司はとても美味しそうだ。普段はワインを好む英理も今夜は寿司に合わせて日本酒を飲んでいる。  透と理央も日本酒を口にしていたが、理斗はお猪口に一杯飲むだけに留めた。 「理真くんはこの日本酒好みじゃない?」 「そうじゃないけど今日は飲まなくてもいいかなって」  珍しいことに酒飲みの理真がひと口も飲んでいないので英理が心配そうに声をかけている。  この場では理真以外には誰にも悟られる心配はないのだが、理斗にはすでに発情期の兆候があった。リビングルームで話していたときには何ともなかったけれど、夕方になって少し熱っぽさを感じたので初めは食事自体断ろうと思ったのだ。だが、せっかく英理と透が帰国したのに部屋に引っ込むのもいかがなものかと考え直した。  ただ、先ほど理真が「番として生きていく」と両親に宣言してしまったので、発情期であることを両親に悟られるのはどうしても嫌だった。発情期だと知られれば、理斗と理真がセックスをするのだと両親も考えずにはいられないだろう。  それで無理をして食堂に下りてきて寿司を食べているのだが、酒を飲もうとしない理真は絶対に理斗の発情期に気づいている。美味しそうに見えていたはずの寿司の味がほとんど感じられないほど理斗は緊張していた。  理真は寿司を食べては英理たちと会話を楽しみ、ときどき理斗を盗み見る。決して理真を見ないように理斗は黙々と寿司を口に運んでいたのだが、最後に玉子を食べようとしたところでうっかり理真と視線を合わせてしまった。  瞬時に発情による熱と底なしの欲望が体を駆け巡り、理斗は慌てて立ち上がる。理斗の放つフェロモンが突然強くなったせいで理真が小さくうめいて口元を手で覆った。 「理斗? 理真もどうした」  透が心配そうに声をかけてくるが理斗はまともに返事をすることも難しかった。 「ちょっと喉に詰まりそうになっただけだよ」  少しでも落ち着こうと理斗が深呼吸を繰り返している間に、理真が苦しい言い訳をしている。
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