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Ⅰ
御厨家の夕食はいつも兄弟そろって摂ることが習慣となっていた。
広々とした食堂には長男の理真と次男の理斗、そして三男の理央が席に着き、給仕をするメイドたちとそれを見守る執事の染谷がいる。
ここに両親が加わっていたのは十年くらい前までだ。
御厨グループと呼ばれている多くの支社を抱えた大手企業の経営は飲食、レジャーに始まり医療や環境事業にまで幅を広げている。海外にも支社があるため両親にはこの家に立ち寄る時間など持ち合わせていない。持とうとしなくなってしまったのかもしれないけれど、理真と理斗はもちろんのこと理央もそのことは決して口に出さなかった。一度だけその話題になったとき、理真が「俺のせいかもね」と笑ったからだ。
「ごちそうさま」
「理央、もう少し食べなさい」
小柄で線の細い理央が食事を半分も終えない内に席を立とうとするのを理斗はとがめた。
「そんなんじゃ理央ちゃん倒れちゃうよ?」
理真も同様にもっと食べるようにと理央へ声をかける。このやり取りも毎回同じで、理央が困ったように座り直すのも毎度のことだ。
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