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ハネムーンサラダの材料は
「ただいまー」
「おかえりー! どっちのキョウちゃん?」
「スケの方」
「はいはいスケちゃんね、おかえり」
奥から聞こえる母さんの声で、兄貴より早く帰ったことを知った。かじかんだ指で雑に靴を揃える。
「ヘイちゃんももうじき帰ってくるらしいから、鍵は開けといてー」
「うーい」
閉めたばかりの鍵を開けて、冷たい廊下をぺたぺた踏む。短いとはいえマジ苦行。家の中なのに息が真っ白だ。耳がもげそうなくらいの寒さは、玄関のドアくらいじゃ防げないらしい。
「ただい、うわ。あったけ」
「外寒かったでしょ。風の音がすごいわね」
リビングのドアが偉大すぎる。廊下との温度差がヤバすぎて、ガラスじゃないとこまで結露してる。
「生き返るぅ……」
「もうじきご飯できるけど、あったかいのでも淹れてあげましょか」
「自分でやるぅ……」
鞄を壁際に置いて、ホットカーペットに座り込む。ケツからじわじわ蘇生して、おかえり、指先の感覚。
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