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「うん。恋人いるみたいでさ、私なんか相手にしてもらえないよ。ケーキ作るのはバレンタインとは別問題」
「とか言って。ちゃっかりこれ練習したやつだったりして!」
「そんなことないよ」
いたずらな視線を投げかけてくる君に微笑み返す。
そんなこと、ないよ。
君にあげたのは本命だから。
練習作は全部自分で食べたから。
そんなこと言って君はきっと私の気持ちを知ってるんじゃないかと時々思うよ。
「一人にしとくの心配だからさ。ちゃんと彼氏つくりなよ?」
君と私は同い年なのに、君は姉のような顔をしてその耳から垂らしたシルバーのピアスを綺麗な指先でさっとなぞった。
君が彼氏からもらったピアス。
悔しいけれどよく似合っている。
「もお、お母さんじゃないんだから。あんたまで急かさないでよ。私だって頑張ってるの!」
ふくれっつらをしてみせる。
君は笑ってコーヒーの最後の一口を飲み干していく。
最近君は綺麗になった。
きっと素敵な彼なんだろう。
だけど私はその彼を少しだけ憎く思ってしまう。
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