ヤンキーが現れた

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 何度も聞かされた話にアキラはうんざりする。 「おにいちゃんたちもそういうタイプ?  何回でも言うけど、ママは優しかったよ。世界で一番ボクのコト大切だって言ってくれるんだ」 「なに言ってんだ。どのメディアもお前は虐待されてたって言ってんだ。 誰でも知ってんだよ」 「そういうのは〝噂〟って言うの。聞いた話でヒトの悪口言っちゃいけないんだぞ」 「もう黙ってろ! 痛い目みねーとわかんねーみてーだな」  不良が近付いて来たので、アキラは女の子を足元に下ろしてそっと背中を押した。 「ここはおにいちゃんに任せなさい。 ここは仮想空間だから、ケンカなんてできないんだ。どうせ恐い顔するだけでなんにも ――イダっ!」  屈み込んでいたところへ横から顔を蹴られた。壁にぶつかって体が弾む。 驚きは突然襲われたことにはない。 「痛い! なんで? なんで痛いの?」  反射的に部屋の属性情報を呼び出すと、痛覚がオンになっている。 「基本設定を書き換えるくらい余裕なんだよ。 俺らを誰だと思ってんだ? この学校サーバーをシメてるブルーハギルド様だぞ!」 「えっ、なんで……? 仮想空間って……そんなコトできるの?」  うろたえている間に、不良の仲間によって腕を掴まれムリヤリ引き起こされた。 その顔面に目がけ、何度も拳が降り注ぐ。
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