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仮想空間こそが現実で、逆にここが仮想だと思い込んでいる。
むしろ今こそ電脳空間に監禁されている、というまったくアベコベの認識だ。
自身の境遇を一向に信じないおかげで戸惑うことも傷つくこともなく、口を開けば「ログアウトさせろ」と「ちんこ返せ」ばかり。
「あのね、現実からログアウトなんてできないんだ。できるのは君がいたバーチャルだけ。
大体ログアウトに制限をかけるなんて、違法行為だよ」
物言いからは段々と被害者への配慮が抜けつつある。
しかし、さすがに「君の母親はやっていたが」と続く言葉は伝えなかった。
電脳規制法。
安全に仮想空間を運用・利用する目的で施行された法律だ。
児童が電脳端末を利用する時間についても規制が設けられている。
「ここが現実だって認めたら、うちに帰してくれる?」
「それはムリだよ。
君が常駐していた仮想空間を構築していたサーバーは押収された。
今からアクセスしようったってできない。
もうあそこには行けないんだよ」
監禁を抜きにしても、5才以下の乳幼児に仮想体験を強制させたことだけで彼女の母は罪に問われる。
そのためにサーバーは犯罪の証拠品と見なされた。
「まったく同じ環境を再現することならできるよ?
元々仮想空間なんだから本物も偽物もないわけだし。
ただ、そういうことをして心を慰めるより、現実に順応して自分の人生を歩んでほしいっていうのが社会の意見だけどね」
自分の居場所だと思っていた所は、現実にはどこにもない。
大好きな母親はボット。
現実の母親は逃亡中。
十五歳の少女が受け入れる現実としては辛過ぎる。
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