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だからこそ両親の教育方針を〝虐待〟とする通告が届いたとき、現代社会へ改宗したのは彼女自身の希望によるものだった。
知らない世界を軽んじたくなかっただけで、両親の行いを否定したいわけではない。
「自分は虐待なんてされてない」
「都会暮らしの同級生たちと同等にやれる」
それを証明するつもりで漲っていた気合いは電脳に触れたことで霧散した。
勉学は親から仕込まれていたので付いていくことができても、体験した時間が肝心で飛び級制度を廃止させた電脳技能の遅れは取り戻せるわけもなく、許可された一日当たりの電脳接続時間だけでは教育機関の定める規定電脳歴に達しない。
順当な進級は難しいだろうとまで言われていた。
そこに希望を見出す意味でも、転校生の登場はルーシーにとって魅力的だった。
クラスメイトからアキラの電脳歴について盗み聞き、「進級のヒントが手に入るかも」と猛烈に期待している。
「教室にいなくて保健室もハズレなら、寮かな?
でもまだ授業残ってるから許可が無いと入れないし……」
寮舎は始業から放課後までの間出入り口が施錠される。
通行するには担当教員の認証が必要となる。
アキラは偽証したが、ルーシーに同じ芸当はとてもできない。
「『気になるから捜してます』じゃ先生の許可なんてもらえないし、誰かにやってもらうわけにもいかないよねえ……。そうだ、ブルーハギルド。アイツらなら!」
アキラによって本日敢えなく栄光の終焉を迎えたとは言っても、ルーシーからすれば彼らはまだまだ魔法使いに等しい。
一方でルーシーは電脳に執着がなく仮想空間でどんな目に遭おうと気にしないために魔法を恐れない。
それは仮想でイジメられても現実で逆転すればいいという考えでいることと、電脳アカウントを攻撃されることの危険を知らないせいでもある。
ブルーハギルドなら寮舎の入り口を開けられる。
ルーシーはそう期待するが、所在が不明である点においては彼らもアキラと同様であった。
そのことに意気揚々と駆け出した五歩目で気が付く。
「まいったな……。やたら人数多いしアイツらの顔なんて憶えてないよ。
今日殴った奴はケガ見ればわかるか。
いっそアイツらの誰かが保健室にいれば話が早かったのに」
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