それはお刺身のつまのように

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大好きなおじいちゃんが亡くなってからもうすぐ一年になる。 私、藤田 純子(じゅんこ)は、その喪失感を埋めるように、ある目標を掲げていた。 それは、おじいちゃんのような立派な名脇役になることだ。 もちろん私は役者などではなく、映画やドラマの脇役を演じているわけではない。 至って普通の女子高生。 容姿も性格も、知能も体力も、平凡そのもの。 そんな私が何の名脇役を目指しているのかというと、しいて言うならば、人生そのものの名脇役だ。 地味で目立たなくてもいい。 人より劣っていてもいい。 私が存在することによって、誰かが輝けるのであれば、これほど幸せなことはない。 生きてて良かったと思える。 だから私は、そんな平凡で、地味で目立たない、劣っている自分が嫌いじゃない。 というか、むしろ大好きだ。 脇役の自分最高!誰よりも脇役な自分を愛している。 ……こういうところが、おじいちゃんみたいになりきれないんだよなぁ。 というわけで、日々私は、脇役活動に励んでいる。 いつか誰かに、最高の一花を添えて、ひっそりと幸せの後押しができますように。 誰かの人生の、最高の名脇役になれますように。
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