それはお刺身のつまのように

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「偉いね。こんな朝っぱらから、ゴミ拾ってんの?」 真っ直ぐにこちらを見つめる澄んだ目が、見とれてしまうほど綺麗で、思わず圧倒されてしまう。 これは正真正銘の、……ヒロインの相手役男子! 眩しくて眩しくて、私は目を擦った。 いや、ぼざっとしている暇はない。 ゴミを拾うなんていう正しく善行チックなことは、彼の目の前で私なんかがやってはいけない行為だ。 やっていいのは、控え目だけど真っ直ぐで、しかも可愛い純情系ヒロインのみ! 「俺も手伝うよ」 そう言って彼の手が缶に伸びた。 これはまずい展開だ。 コレ、ワキヤクチガウ。 「ああああの!私収集癖半端ないんです!落ちてる缶コレクションしてる変態なんです!だからゴミ拾いじゃなくて、お宝集めなんです!ではさようなら!」 秒速で缶を拾って素早く退散!! 「待って!」 その時、彼の手が思いきり私の腕を掴んだ。 か、カベドンならぬウデグイ! 益々脇役の範疇を越えている! 誰か助けて! 「……あの、俺、3組の新條 彰人(あきと)」 新條……主人公くさいイケてる苗字だ。 「名前、教えてくれる?」 振り向いた途端に、また神々しい微笑みに目を殺られそうになった。 「な……」 「な?」 「名乗るほどのもんじゃないんで……」 「なにそれ」 「では!」 彼の手の力が一瞬緩んだ瞬間に、思いっきり全力疾走する。 両手にゴミ袋をかかえて。 ……とんだ目に遭ってしまった。 こんなの私の脇役の美学に反する行為だ。 彼が私に好意を持っているなんてこれっぽっちも思っちゃいないが、きっとからかっているか、いい人すぎて誰にでも自己紹介するナイスガイなのか、……あの笑顔思い出すと後者な可能性大だが、それでもあってはならない。 こんなシチュエーションは、さっき妄想した純情系ヒロインの出番で、私はその二人を眺めながら焼却炉へ向かう脇役。 それがベスト。 それが正解。 ああ、さっきのシーンやり直したい。 テイク2を懇願する。 くだらないことを考えていたせいで、私はジャージ姿で遅刻して皆に笑われるというお調子者系脇役を演じたのであった。
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