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「じゅんちゃん、どうしてジャージなの?」
ホームルームが終わると、親友の結衣(ゆい)が即座に声をかけてきた。
結衣は、サラサラの髪に華奢な体、色白な肌といった、名前と共にヒロインの要素を満たしている可愛い女の子だ。
だけどちょっぴり遠慮がちで大人しく、誰に対しても分け隔てなく優しい性格。
先程私が披露した妄想の、控えめな純情系美少女を地で行っているようなタイプ。
正にカベドンをされるに相応しい、カベドン界のホープ、カベドンの神に愛された女。
名脇役も腕がなるってもんよ。
「ちょっと脇役活動に手こずっちゃって」
「またそんなこと言って」
こうやって私の意味不明な話にも嫌な顔ひとつせず笑ってくれるのも、彼女のいいところ。
なんつーか、一つも拗らせてない。
いつだって、『じゅんちゃんは脇役なんかじゃないよ』と親身になって答えてくれる。
益々脇役魂に火が付くという流れだ。
「ところで、阪本君とはどうなったの?」
私が脇役らしくニヤニヤしながらそう問うと、結衣は可憐に顔を赤らめた。
その反応からすると、どうやら上手くいったようだ。
阪本君は隣のクラスの男子で、結衣と私と同じ中学出身だ。
そして、中学の時から結衣が彼に片想いしているってわけ。
というより、端から見ているとほぼ両思い間違いなしの状態だ。
焦れったいことこの上ない。
私は名脇役の名のもとに、全身全霊で彼女の恋を応援していたのだった。
「……付き合えることになった」
「やったじゃん!!」
真っ赤になる結衣が可愛いのと、恋が実ったことの歓びで、私は彼女をぎゅっと抱き締めた。
「じゅんちゃんのおかげだよ。昨日きっかけ作ってくれたから……」
いや、私が居ても居なくても関係なく、二人が付き合うのは時間の問題だった。
だけどこうやって脇役活動が認められると、やっぱり心底嬉しい。
……百パーセント自己満足だけど。
「ダブルデート計画のおかげだよ。本当に感謝してる」
同じ中学だった男子をもう一人誘っての映画デートは成功だったようだ。
やはり泣ける感動系映画は、感受性が強くて心優しい結衣の魅力を引き出すのにはうってつけだった。
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