それはお刺身のつまのように

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「おい、このチケット期限切れてんじゃねーか」 結衣に背中を押されてしぶしぶ廊下へ出ると、岡島は案の定くだらない案件を口にした。 昨日渡した学食チケットを手に怒りを露にする岡島。 全くもってときめかない。 「……ああ、ごめん。じゃあ今度新しいの渡すよ」 「今日これ使おうと思ってたから財布持ってねーのよ。今日奢って。昼、食堂集合な」 「ええー」 ____「ねえ!!」 「え?」 突然何者かに強く腕を掴まれたと思うと、廊下中に女子達の絶叫が響いた。 私の腕を掴んでいるのは、他でもなく、あの主人公男子だ。 「朝の人だ!」 改めて至近距離で見るとそのイケメンぶりに絶句してしまう。 それにどことなく爽やかな良い匂いが漂って…… これがいわゆる主人公臭というものか。 あまりのオーラに圧倒されて黙っていると、周囲が私達を見てざわついていることに気がついた。 またもや脇役らしからぬ事態だ! 「名前なんていうの?」 まだ名前を聞いてくるし。 なんなの、一体。名前聞いてどうなるっていうんだ。 ノートに書いて呪いでもかける気か。 「ねえ……」 懇願するような潤んだ瞳で見つめられて、本当に呪いにかけられたように頭が真っ白になる。 触れられている腕は焼けるように熱く、鳥肌と冷や汗が止まらない。 「藤田だよ。藤田純子」 岡島が思い切り空気をぶったぎり、私の名前を彼に教えた。 「藤田……純子……」 彼は考え事をしているかのように暫く黙りこんだ。 「……離して下さい」 なんとか精一杯そう伝えると、腕を強くひいた。 それでも彼は掴んでいる手を離さない。 「フジジュン……」 「え!?」 まさか、おじいちゃんの孫だってバレてたんだろうか。だから名前を……? 「いや、フジコちゃん」 「は?」 「フジコちゃんにしよう!」 彼は満面の笑みで今度は私の手を握った。 「俺のことは彰人でいいから!よろしく、フジコちゃん!」 「は……?」 わかった。 「クラス隣だし、仲良くしような!」 ____この人、変な人なんだ。

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