プロローグ

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プロローグ

「ハァハァ……!!」 荒々しい息をつく。 ここは薄暗く、かび臭い地下道。 数年前に廃棄されて以来、人が全く近寄ることなかったので当然だろう。 だがけれど、そんな誰もいないはずの地下道にそれはいた。 それは、男だった。 二回り以上大きな黒いコートを纏った男が一人、立っていた。 「ふぅーーーー」 深呼吸と共に嘆息に近い息が混じりあって消えていく。 男は特に特徴はなく。ボロボロになった黒いコートを羽織っている。 見た目がやや幼く見えるため、少年のようなイメージがある。 男性にしてはやや髪は長く、肩に絡みつきそうな漆黒の髪。 深淵を写すがごとく、闇色の双眸。 幼げな顔を鋭く尖らせ、静かに唇を閉じてこちらを睨んでいる。 彼と私は対極の存在。 決して交わらぬ線と線。 この世に生を受けた瞬間から対立していたとさえ、錯覚する。 「あなたが赤月(あかつき) 正義(まさよし)ですね」 明確な意志を持って。 澪(れい)は、言葉を発していた。 彼が瞬時に喉元を掻っ切る事を、考えて。 男が、ゆっくりと口を開く。 「お前が、宮ノ守(みやのもり)澪(れい)だ。」 見た目と同じく、少々幼げな男の高い声が狭い地下道内に反響した。 その返事が合図かのごとく二人は咄嗟に懐から一丁の銃を取り出す。 その銃すらも対極の存在。 支配する銃と、 解放する銃。 銃をお互いに構えたまま静止する。 ほんの数秒しか経ってないはずなのにその時間が永遠にも感じられる。 何故、こんなことになってしまったのだろう。 湧いてくるのは単純な疑問。 私と彼が交わらぬ理由。 その理由を考えた瞬間。 二人の目が交わる。 「___っ!!」 まるでそれが合図だったとばかりに同時に銃の引き金を引く。 生まれるずっと前から私と彼はこうなる運命だったのかもしれない。
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