prologue

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そこはどこかもわからない、深い深い暗闇の中。 右も左も、上も下も、自分自身がどこを向いているのかもわからない、真っ暗闇の無の空間。 時間の概念すらない世界で、ただそこにゆったりと揺蕩うように浮かぶ私は、「あぁ、これはきっと夢なんだ」というぼんやりとした考えを思い浮かべていた。 身体は思うように動かすことは出来ず、言葉を発しようとしても、その行為すら起こそうとも思えない。ただただ、そこに揺蕩うだけ。 これは私がよく見る夢だ。自分で自覚できるほどに、私はこの夢を何回も何十回も見ていた。目が覚めてしまえば覚えてることはなにもないけど、この夢の中でだけでなら、思い出すことが出来る。 ……もっとも、なにも起きないのだから、回数なんてあやふやなんだけれども。 ただ脱力感に支配される身体を動かすこともなく、ぼんやりとした感覚でいつものように夢から覚めるのを待つだけかと思っていた私は、ふと、どこからか声が聞こえているような気がして、少しだけ覚醒した意識をそちらへと向ける。 いままでの夢の中では初めてのことだっために、興味津々でその方向へ向かおうとするが、相変わらず真っ暗な空間の中では本当にその方向へ進んでいるのかもわからない。 地面と思われるものもなく、無重力の空間の中に放り出されている状態なため、足と手を泳ぐときのように動かし、その方向へと向かおうとする。 しばらくそうしているうちに、声が少しずつハッキリと聞こえてくるようになり、かなり遠くにぼんやりとした光が見えた。誰の声かはわからないが、聞き覚えがある……そんな気がしながら、その空間をさらに進んでいく。自分がその空間を進んでいく内に、その声の下へといかなくてはという使命感が強くなっていた。
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