エピローグ

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 育子が宿泊している部屋を、清治が訪ねた。  清治は、行方不明となっていた育子を訪ねて来たという言い分を言ったが、魂胆は怜奈が殺害された事件の方である。  育子は落ち着き払った様子で清治を部屋に上げた。清治と育子、そしてもう一人の刑事が座卓に向かい合わせに座った。 「あなたのことを、旦那様が探していました」 「ええ。そうでしょうね。でも、あなたは、そのことでこんなところまで来たのではないのでしょう」  育子は、錦に包まれた小箱を清治の前に差し出した。 「ここに欠けたものがございます」  小箱が開けられる。そこには、紫色に変色した、腐った指があった。鼻を刺す腐臭に清治は鼻を歪めたが、同時にそれが怜奈の右手から切り取られたものであることを読み取った。 「白状いたします。麗爾、いえ、有田怜奈は、私が殺しました」  育子は頭を下げた。  清治はそこでため息を煙に変えた。 「そうですか。あなたは、有田さんを殺した後、小指を切り取り、思い出の土地であるこの箱根に逃げて来た。随分と凝ったことをしましたな。あなたは、どうして有田さんを、手にかけたのですか」  清治はぐっと育子に睨みを効かす。彼女はそっと視線を反らし、窓の外に広がる雄大な箱根山に目を移した。
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