プロローグ

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「ごめんなさい。生憎、男の顔は見たくないの」  酔った勢いでとんでもない言葉を吐いた。   「ご、ごめんなさい。こんなことを言うつもりはなかったのだけれど」 「いえいえ、お気になさらず」  客引きの男は、慣れた様子で返した。しおらしくなった育子ににっこりと微笑みかける。 「そう言えば、面白いお店があるんですよ」 「いえ、そういうのは大丈夫ですから」 「女性の方が、女性をおもてなしするというお店です。男性の店員の方はいないんです」  育子はちょうど酔い直したい気分だった。かと言って、ひとりで飲むのは淋しい気もするし、男の顔は見たくない。そう思っていたところに、“女性が女性をおもてなしする”というのは、非常に魅力的に聞こえた。
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