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それから手に入れた情報は、育子の家族がキリスト教徒であり、日曜に欠かさず近くの教会のミサに親子で出席すること。これは女性社員から聞いた。育子とともに教会のミサを体験したという。
そして、清治は最後に育子本人が会社にいない理由を尋ねた。
「ああ。なんでも有給休暇を急に取られまして。私共も少し慌てました。まあ、去年もこの時期に有給を取っていましたが、そのときは箱根に行ってきたと言っておりました」
男性社員は、額に手をやって応えた。
清治は外堀から攻める方だ。育子本人がいないことはむしろ好都合であった。この息を合わせたかのような彼女の休息は、清治の中で彼女への懐疑心を増幅させた。
やがて、清治のスラックスのポケットで、スマートフォンが鳴った。娘にいいかげんに持ちなさいと諭された物だ。
同じ事件を担当している別の刑事からの電話だった。
清治は断りを入れて、広告会社の応接間を出て、廊下で電話に応対した。
「もしもし――」
電話の向こうの刑事も、清治が育子の身辺調査に移ったことは知っている。彼が慌てた様子で伝えてきたことに、清治は耳を疑った。
三好、いや吉田育子の夫から、彼女の捜索願が出されたと。育子は会社と夫、その両方から行方の知れない所へと消えていたのだ。
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