幸せの梅干しおにぎり

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幸せの梅干しおにぎり

コタツにはみかんが合う、というのは全面的に同意だが、個人的にはコタツに梅干しおにぎりを推したい。身も心も暖まり、全身が幸せの塊になる。 そうやって幸せを噛みしめていると、コタツの天板がぐらぐら揺れるのに気が付いた。なんだろう、と思い持ち上げてみると、かわいらしい顔をした小さな小さな棒人間が挟まっていた。 昨晩コタツでお絵描きをしたので、その時の落書きがうっかり天板に挟まってしまったようだ。棒人間は慌てて抜け出し、私の腹の上に飛び込んだ。 他に挟まれているうっかり者がいないことを確認し、ゆっくり天板を戻す。腹の上でうずくまる棒人間を持ち上げコタツの上に乗せる。一晩中挟まれていたのですっかり弱っているみたいだ。よく見ると泣いているようにも見える。しかし、そこまで細かい表情は描かなかったので、気のせいかもしれない。 弱った時は梅干しおにぎりに限る。私は小さな棒人間用に小さなおにぎりを作り、食べさせてあげた。棒人間は小さな口でお米一粒一粒をホクホクと食べ、中に握り込んだ梅干しの欠片を食べると、顔をグニョグニョにした。梅干しを食べたらお米を頬張り、お米を飲み込んだら梅干しをかじる。これが幸せなんだな。 梅干しおにぎりを食べ終えた棒人間は、お腹いっぱい元気いっぱいでお絵描き帳に戻っていった。その小さな顔は、私にはとても描けない、なんとも幸せな表情をしている。
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