(4)成敗

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「お願いできますか?」 「残念ながら、それは無理ですねえ」 「は?」  眉をひそめた宗明に嵯峨は肩をすくめた。 「どうせなら、皆で行きましょう」 「どういうことです?」  すると嵯峨はゆったりと優雅に扇を開いた。  それを口元にあて、少し低めた声で囁くように言った。  聞こえるか聞こえないかのかすかな声に、また一瞬喧騒が聞こえなくなった。 「ゆらちゃんには見届けてもらわなければなりませんからね」 「……見届ける……? ゆらさまが……?」  扇の上から目だけをこちらに向けて嵯峨は頷いた。 「そろそろ知っても良い時です」  宗明が息を飲んだ、ような気がした。  肩越しに見ても、宗明の表情のすべては見えない。  けれど彼が今までとは違う緊張をしていることは感じた。 「三郎太?」  声を掛ければ、肩が小さく震えた。 「……私が、お守りします。……参りましょう、ゆらさま」  ゆらに向けられた瞳には、葛藤と憂いが色濃く浮かんでいた。 「……いいの?」  あのゆらが、そう問い返さずにはいられないくらいに。 「よくはありませんが、仕方ありません。私の側から決して離れないよう」  腹をくくった宗明の動きは早い。  ゆらの手首を掴むと引き寄せ歩き出した。 「わ、ちょっと、三郎太!」 「それでは私も行きましょうかねえ」  後ろで嵯峨の呑気な声が聞こえた。  引きずられるようにして歩いていたゆらがその声に振り返ると、もうそこに嵯峨の姿はなく、彼のいたその場所には大きな水たまりが出来ていた。  
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