(4)成敗

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 一瞬の出来事に、おしずも娘たちも口を開けたまま立ち尽くしていた。 「早く逃げな」  言われて、はっと我に返ると、傍らには背の高い男。  公家風の衣を身に着けている。 「あ、あの」 「早く行きなって」  苛立ったように言う男に背中を押されるように、おしずは気を失った娘を肩に担ぐと、他の娘を促した。 「行きましょう」  ちらっと助けてくれた男を見れば、彼はおしずたちには一瞥もくれずに、鋭い殺気だけを帯びながら闇の中に立つ敵を見つめていた。    女たちの気配が遠ざかって行く。 「執着あるのかないのか、どっちだよ」  彼女たちを(にえ)と呼び、逃がすまいと追いかけて来ておきながら、随分あっさり見逃したものだ。  それとも、まだ何か手があるのか。  公家風の格好をした彼の視線の先で男が身じろいだ。  すっと身構える彼を無視するように、掻き消えるように男の姿が消えた。  呆気ない。呆気なさすぎる。 「まあ、無駄な力使わずに済んだけどさ」  物足りない……。  彼は不満そうに呟くと、屋敷へと足を向けた。  
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