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だが今度は村長の母親が原因不明の高熱を発し、七日七夜苦しみ抜いて亡くなった。
使用人達は気味悪がって次々と辞めていき、とうとう広い屋敷には村長と妻の2人だけになってしまった。
不穏な空気の中で、村人全員が息を詰めて生活している。
やがて村長自身も精神に変調をきたしたらしく、意味不明の叫びをあげながら犬や猫、果ては子供達までも棒を手に追い回すようになっていった。
この頃には村の中でも葬儀が立て続けに起きるようになっていた。
先週はあの家、一昨日はこの家、今日はあそこの家……と言った具合だ。
大人達はどうしたものかと額を寄せあって相談を重ねたが、良い案が浮かぶはずもない。
当時12歳だったミチさんや幼い弟妹、村の子供達は、大人の話に首を突っ込む事を禁じられていたが、それでも緊張を孕んだ空気は理解できたそうだ。
そんな中、村長の妻が自ら命を断った。
屋敷を抜け出し、村境の道祖神脇にそびえる楠の枝に縄をかけ、首を括ったのだ。
ここに至って、ミチさんの祖父母は決心を固めた。
ミチさんの両親に「この村はもうだめだ。禁忌を犯した以上、災厄は村全体に及ぶだろう。お前達だけでも村を出て暮らすように」と告げたそうだ。
一緒に村を出ようと説得する両親に「村長を止められなかった自分達にも責任はある。自分達はこの村の結末を見届ける義務もある。だが、お前達は子供の事を第一に考えなくてはいけない」と譲らなかった。
ミチさん一家は最低限の家財道具だけを持ち出すと、逃げるようにして村を後にした。
同じようにして村を去る家族も数軒あったそうだ。
その後、祖父母が亡くなるまでに数回手紙のやり取りがあったが、文末には必ず「絶対に村には帰ってこないように」と書き記されていた。
やがて祖父が亡くなり、間を置かず、後を追うようにして祖母も他界した。
しかし一家は、葬式に帰る事も出来なかったという。
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