艶書

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 別に今更知った所で梶原にご丁寧にお断りする様な話でも無いのだが、縁が隠すからか妙にあの手紙の真相が気になって仕方がない。  そんな矢先に縁から話があると連絡があった。  夜、仕事が終わってから縁の自宅を訪ねた一至は、居間の卓袱台を挟んで恭しくあの手紙を差し出す縁に、虚を突かれた様に固まる。 「ご、ごめん……ずっと渡せなくて……」 「いや、別に良いけどよ……」  縁いわく、その手紙は中学の卒業式前に貸したジャージと一緒に梶原から預かったものだと言う。  梶原は一至と一番仲が良いと思った縁に、ジャージの入った紙袋を持って縁の自宅へ来たらしかった。 「その中に、手紙が入ってたんだ……」 「で、何でそれを今渡す気になったわけ?」 「……ずっと、渡さなきゃって思ってはいたんだけど……」    縁は正座した膝頭に両手を握り締めて俯く。  別にそんな怒っているわけでもないのに、どうしてそう卑屈な態度になるのかと一至は首を傾げた。  見てもいいか? と縁に一言声を掛けると、縁はコクリと頷いた。  女の様な柔かい文字で綴られたその恋文は、あの梶原からは想像出来ない程、直接的かつ大胆な文面だった。 「梶原って、こんな事言う奴だっけ……?」 「ぼ、僕もちょっと驚いたんだけど……」  子犬の様な柔かくて小さいあの頃の梶原しか脳裏には浮かばないので、余計にその文面が本人が書いた物とは思えなかった。  大まかに言えば、好きだと言う事とそれが友達としてではないと言う事を滔々と語ってある。  ――――僕は君に抱かれたいと思うんだ。  読んでいるこっちが恥ずかしくなって来て、チラリと縁の方を見れば縁もチラリとこっちを見ている。 「彼があんな噂を立てられたのは一年生の時のプールの授業が原因だったんだ」  縁はそう言って申し訳なさそうに話し始めた。
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