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あの時ふと脳裏を過った事が勘違いで良かったと、一至は長い溜息を吐いた。
「ところで縁、お前が童貞なのは知っているけど、後ろは処女なのか?」
「……この状況でそんな事聞くとか、そんなだから女の子にフラれる」
「いや、どうなんだよ?」
「こ、この歳まで性行為自体した事無くてあんなもの書けるわけないでしょ……」
つまり処女では無いと言う事か、と一至は得も言われぬ激しい衝動を覚えて、乗り上げていた卓袱台を引っ繰り返す勢いで縁を押し倒した。
「うわっ! ちょ、なっ……あぶなっ……」
「今すぐ俺のものにする」
白い肌の内側で百日紅の木の様なしなやかな曲線を描く鎖骨に噛みつき、吸い上げる。
手に吸い付く様な雪の肌と、聞いた事のない甘い嬌声は、一至の熱を容赦なく煽った。
肉感を確かめる様に手の内に収めた縁の欲望は柘榴の実を思わせるほど色付き、蠢く様に身を捩り堪えるその姿だけで果ててしまいそうな程昂ぶって、余裕のないその焦燥が自分が動物である事を思い出させる。
「愛のないセックスに意味はないとか言ってやがった癖に……」
「んっ……だ、だから……イチとじゃないと……」
成立しない――――。
この美麗な男は自分のものだと沸き上がる所有欲に任せて、長らく書き綴られて来た淫らで艶やかな恋を抱きながら、青い春はようやく芽吹く。
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