かくれんぼ

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かくれんぼ 並んだドアの前に、一つだけ白い木の箱が置いてあった。 「ねえ、この中にかくれようよ」 「えー。でも、すぐに見つかっちゃうんじゃないかな? それに、すごく小さくて窮屈そうだよ」 「大丈夫だよ、二人ぐらいなら余裕で入れるさ。グズグズしていると、みんなが来ちゃうよ?」 本当だ。 耳を済ませたら、パパとママの声がする。 すごく怒ってる声だ。 「見つかったら、ぶたれるかも……」 「だろ? さあ、この中にかくれよう」 恭一君が箱のフタを支えてくれているうちに、ボクは中に入りこんだ。 続いて恭一君も入ってきて、寝ながらフタを閉めた。 箱の中は思っていたよりも狭くなくて、横向きに向き合ったまま、ボクと恭一君はクスクス笑いあっていた。 じっとしていると、箱のすぐそばでパパとママの声がしたから、驚いて口を押さえてたんだ。 「まったく、あの子ったら、どこへ行っちゃったのかしら? 大人しくしているように言ったのに」 ママの声だ。そうとうイライラしているみたいだ。 「だから、ちゃんと見ておくように言っただろう。子供が一人でじっとしていられるわけないんだ」 パパの声だ。ママに向って怒ってる。 「そんな事言うんだったら、自分で見てれば良かったじゃない!」 「何だと! 俺のおじさんの葬式だぞ。親戚連中の顔だってある。子供の面倒ばかりみているヒマなんてないだろう」 「あたしだって、あなたの親戚の手前、手伝いもしないであの子の世話なんてしてられないの、分かってたでしょう!?」 もう、ボクの事なんかそっちのけだ。 自分達の事だけでケンカしてる。 パパとママのすぐそば、となりと言ってもいいほど近くの箱の中にボクはいるのに、二人とも気が付かないんだ。 ヘンなの。 まるで、ボクなんかいないみたいだ。
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