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箱の中で向かい合っている恭一君が、ボクの手をキュッとにぎってくれた。
「大人って、勝手だね。自分達の都合で、子供を振り回しておいて、子供が自分の言うとおりにしないと怒るんだ。『お前のためだ』とか言ってさ。本当は、自分達のためなのに」
恭一君の言っている事は、ボクには良く分かった。
ボクもそう思っていたから。
「仕方ない。いつまでも、こうしているわけにもいかんだろう。そのうちに出てくるさ。それよりも、そろそろ収骨の時間だぞ」
「……そうね。隠れるのに飽きたら、自分から出てくるわね。そうしたら、うんと叱ってやるんだから」
そう言うと、パパとママの声と足音が遠くなっていった。
「もう出ても、大丈夫かな?」
「まだだよ、今出て行ったら、見つかっちゃうよ。そしたら、君のママはすごく怒るだろうね」
さっきまでのママの声を思い出したら、たしかにそうだと思った。
もう少し、心配させてやろう。
ボクは恭一君と目を見合わせて、クスクスと笑った。
「ボクね、友だちがいなかったんだ。だから、君と友だちになりたいんだけど、いいかな?」
「なに言ってるんだよ? ボク達、もう友だちじゃないか。だから、こんな箱の中に一緒にかくれているんだろ?」
「そっか。ボク達、もう友だちなんだ」
恭一君はうれしそうに、そう言って笑った。
「ボクのパパとママはね、ボクの事を『いらない』って言ったんだ。パパはお酒を飲んで、よくボクをぶったよ。ママは、パパの機嫌が悪いのは全部ボクのせいだって、やっぱりボクをぶったんだ」
恭一君が話し始めた。
「それでね、ある日、パパはお酒の飲み過ぎで歩いているところを、クルマにはねられて死んじゃった。ママはね、パパのお葬式が終ったら、知らない男の人と出て行っちゃったんだ」
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