かくれんぼ

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見~つけた ボクと恭一君を入れた箱は、ガラガラと音を立てて動いていく。 「ボクはね、ずーっとずーっと待ってたんだ。でも、ママは帰ってきてくれなかった。食べられるモノは、なんでも食べたよ。生の野菜とか、お肉とか。ボク、料理はできなかったからさ。マヨネーズにケチャップにソース、全部なめた。さすがにおしょう油は、ノドがかわいて仕方なかったけどね」 何事もないように、恭一君の話は続く。 でも、その話、おかしいよ。 「冷凍庫に入っていた冷凍食品も、そのまま食べた。マーガリンとか油もなめた。ゴミの中から、食べられそうなモノを探して食べた。でも、そんな事をしてたら、すごくお腹が痛くなっちゃって」 ボクの手をつかんでいる恭一君の手、どうして氷みたいに冷たいのさ? ママの『冷え性』だって、こんなに冷たくないよ。 「トイレに行っても、ボクのお腹の痛いのはなおらなくて。お薬の入っている箱は、タンスの上に置いてあったから、ボクには手が届かなかったんだ。痛くて、苦しくて、悲しくて……」 ボクの手をつかんでいる、恭一君の手。 それを見て、ボクは悲鳴をあげそうになった。 カサカサに乾いて、干からびた、骨と皮ばかりの手。 指先の爪が、所々はげている。 驚いて恭一君を見ると、ガイコツみたいな顔に真っ黒な穴が、目のある場所に開いている。 「うわわぁぁぁぁぁぁ!!!」 ボクが大声でさけんだ瞬間、どこかで重たい音がひびいた。 ガコオオォォォン……。 「なに? なんの音?」 おびえて視線を動かすと、恭一君の声がした。 乾いてカサカサになった恭一君の口が動いている。 「もう、戻れないよ。あの音は、火葬炉のドアが閉まった音だよ。もうすぐ、火がつけられるんだ。ね、一緒に行こうね」 「イ、イヤだ! 出せ! ここから出せよ! ボクはまだ死んでない!!」 ボクは狂ったように箱のフタを手の平でたたいた。
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