かくれんぼ

9/11

4人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
「パパ! ママ! ボクはここだよ! 分かってよ、パパぁ! ママぁ!」 「むだだよ、聞こえやしないって。ボクが苦しんだ時だって、ダレも助けてくれなかったんだ。一人で死んでいくのはイヤだなって思ってたけど、君が一緒に逝ってくれるから、もうさびしくないや。だって、ボク達、『友だち』だろ?」 「パパぁ!! ママぁ!! 見つけてよぉ! ここだよぉ!」 にぎりこぶしで、皮がこすれて血が出るまでフタをたたいたけど、全然開かないんだ。 どうしよう、どうしよう!? 箱のまわりで、ボッ!という音がした。 すぐにヘンなニオイがしてくる。 ケムリが箱の中に流れこんでくる。 「イヤだよぉ! まだボク、生きているんだよぉ! パパぁ! ママぁ! ちゃんと言うこと聞くからさぁ! もう、パパとママの言いつけを破ったりしないよぉ! だから、助けてぇぇぇぇぇ!!」 フタをたたき続けるボクの体に、恭一君が──恭一君だったモノがからみついてくる。 「むりだってば。さっき、君も聞いただろ? 大人達はボク達子供の事なんて、どうでもいいのさ。自分達の都合が一番大事なんだから。ボクはうれしいんだ。君みたいにステキな『友だち』ができて」 「ゴホッ…ゲホッゲホッ…く、苦しい…熱いよ…」 木で出来た箱が、茶色く変色し始めている。 熱いよ、熱いよ……。 「うれしいな。ボクの『友だち』だよ。ずーっと一緒だからね」
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加