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ならば、建物自体に問題はないという事になる。
だとすれば、利用客の誰かが連れてきたモノを、そのまま置いて来たという事か?
とんだ「忘れ物」だ。
寝ぼけて見間違えたんだろう、と言われてしまえばそれまでかもしれない。
でも、あのリアルさは、どうしても「見間違い」で片付けられない感触を私の中に残していた。
「お忘れ物はございませんか?」
そんなスタッフの言葉に頷きながら、私はどこかに消えてしまった子供の事を伝えるかどうか迷い、結局、何も言わずに店を出た。
こんな話をされても、店側も困るだろう。
まあ、私に憑いてきているのでなければ、それでいい。
睡眠不足になる以外に、実害はなかった訳だし。
様々な事情で人が集まる場所だから、それこそ様々なモノも集まるのだろう。
私も知らず、背負っていたモノ、連れていたモノを置いて来ているのかも知れない。
後にも先にも、そんな経験をしたのはこの時だけだが、今でも月に何度かはネットカフェを利用している。
そしてそこにある「何か」を持ち帰っているのかも知れない。
今度、異様な寝苦しさを感じて夜中に目を覚ましても、決して暗がりや隙間を覗き込まない。
それだけは確かだ。
─ 了 ─
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