雨夜の訪問者

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何が、今日のスカートは短いじゃないの? とか、結婚するまでの腰掛OLは仕事よりも男を漁る方が得意ね、とか。いちいちうるさいってのよ! そうよ、毎日毎日、嫌な上司に頭を下げて、取引先の相手のくだらないギャグを聞かされて。オヤジギャグなんか聞かされても、笑えねーっつーんだよ!」 ワタシは後ろにくっ付いている【彼女】に聞かせていたんだけど、言葉にしているうちに、段々頭に血が昇って来た。 ああ、ムカつく!! そうよ、ワタシは自分の事で精一杯なの! あんたなんかに付きまとわれてる余裕なんて、全然ないのよ!! いい加減にしなさいよ!! 少しだけ、ペダルが軽くなったような気がする。 道の先に見えている信号や店舗の明かりが、ちょっとだけ近くなったような気がする。 ワタシの怒りに、背後の【彼女】が引いたのかもしれない。 ここぞとばかりに、溜まりに溜まった怒りをぶちまける。 「自慢顔で彼氏の話ばっかりしやがって。そんなに高学歴の彼氏がいいのかってのよ! どんな車持ってるだの、どんな店に食事に行っただの、やかましいんじゃ! 車なんか乗って走れりゃ、何だっていいんだよ。食事なんか美味しく食べられれば、店のブランドなんか関係あるか! バッグは使い勝手が良くて丈夫なら、どこのモンだっていいでしょうによ。【えー、**ってブランドバック、持ってないのー?】って、余計なお世話でしょうに! ブランド持ってるのが、そんなの偉いのか!? セクハラ上司、いっつも人の足とか胸ばっかり見てんじゃないわよ、気持ち悪いのよ! 人がどんな服着ようが、あんたにゃ関係ないでしょうが! 欲求不満は家で処理して来いってんだよ!」 ワタシが大声で叫べば叫ぶほど、ペダルが軽くなる。 首にしがみついていた【彼女】の力も弱くなっているように感じてきた。 よしっ、気合よ! 死んだ人間がなんぼのモンじゃい! 生きてる人間の方が、想いは強いに決まってんじゃないの! ペダルをこぐ足に更に力を入れ、見える明かり目指して気力を振り絞る。 「あんただってね、悔しかったらさっさと生まれ変わって、ワタシに文句言いに来てみなさいよ! こんな所で迷ってるより、よっぽど建設的でしょうに。 そんな子供の格好して、同情引こうとしてんじゃないわよ! あんたが見たまんまの年じゃないなんて、ちょっと考えりゃ分かることよ。そんな事してる暇があるんなら、サクサクあの世に行ってちょうだい。
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