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気が付いてしまったからには、無視するわけにもいかないじゃない。
最近は塾なんかで帰りの遅くなる小学生もいるみたいだし。
転んでケガでもして、歩けなくなっちゃったのかしら?
どんどん距離は近づいていく。
仕方がない……。
はあぁぁっっと再びため息をつくと、その小さな影の前に立った。
「どうしたの? こんな時間に一人で?」
影の主は、赤いランドセルを背負って黄色い帽子を被った、小学生の女の子。
うつむいているせいで、顔までは良く見えない。
それにしても、この街灯のチカチカ、鬱陶しいな。
「……待ってるの」
女の子がかすかな声で答えた。
雨に濡れていたせいかしら?
って、え?
傘も差さずに、ここにずっと立ってたの?
「ね、ねぇ、誰を待ってるの? もう夜も遅いし、おうちに帰った方がいいよ。お父さんとお母さんも待ってると思うし」
ヤバイ。
係わり合いになっちゃいけない類のヤツかもしれない。
そっと、後退ろうとした時、路面に出来た水溜りに触れたパンプスが音を立てた。
パチャッ……。
「……っ!」
女の子が顔をあげた。
なのに、影がへばりついたようになっていて、表情が読み取れない。
「アタシ、待つの飽きちゃった。ねえ、お姉ちゃんの所に行ってもいい?」
「え? あ、だ、ダメよ。うちは家族、多いし。それに、勝手によその家に行ったりしたら、あなたを迎えに来る人が困っちゃうかもしれないじゃない」
ワタシは必死になって、女の子の視線から逃げようとした。
目は見えないのに、全身に絡みつく視線だけはしっかりと感じる。
「大丈夫だよ、心配しなくても大丈夫。だから、いいでしょ? お姉ちゃんの家に行っても。アタシ、お姉ちゃんの家に行きたい」
女の子が小さな手を伸ばして、ワタシのスーツの裾を掴もうとしたその瞬間。
~~♪~~♪~~♪
カバンのポケットに入れていた携帯が震えた。
ヘッドフォンをつけたままにしていたので、着メロは聞こえないけど、バイブで着信を知らせている。
「あ、電話……」
携帯を取り出して見てみると、家にいるはずの姉からの電話だった。
「ちょっと待ってね、電話だから」
かすかに舌打ちをしたように感じられる女の子に背を向け、ワタシは携帯を耳に当てた。
「もしも……」
ワタシが言葉を発し終る前に、姉の鋭い声が耳に突き刺さった。
『あんた、今、どこにいるの!?』
「どこって、近所のお稲荷さんの角曲がったところ」
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