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「え~~~、それって、お姉さんいなかったらヤバかったんじゃない?」
「うん、帰ってお姉ちゃんにメッサ怒られたわ」
「そっちの方が怖かったりして」
「言えてる~~」
あははははー、と能天気に笑いながら、ワタシは心のどこかで思っていた。
(この話をしたのは、マズかったかな?)と。
いい気分に酔いも回って、お店を出た時には小雨が降り始めていた。
「やだー、雨よ。あたし、傘持ってこなかったよ。家に帰るまで持つかな?」
「ワタシなんか、これから電車乗って帰るのよ? 駅につく頃には、絶対に本降りになってるよ」
「そうかもね」
「じゃねー!」
「また、明日!」
手を振って同僚と別れると、駅に向って歩き出した。
本降りになる前に、家に帰り着かなくっちゃ。
駅からは自転車だから、あんまり雨が強くなると困るんだよね。
電車に乗り揺られていると、程よい酩酊感も手伝って眠たくなってくる。
運良く座れた事もあって、ワタシはウトウトし始めてしまった。
現と夢の間でさまよっているワタシは、自分の前に誰かが立ったのに気がついた。
ぼーっと半分寝ぼけた状態で薄く目を開けると、立っているのは子供らしかった。
席、替わって欲しいのかな?
でも、ごめん。お姉ちゃんも眠いんだ。
何だか頭の奥のほうで警報が鳴っているような気がしたけど、久し振りに飲んだアルコールがワタシの意識を抑えていて、うまく考えがまとまらない。
ワタシは電車の揺れに身を任せて、しばしの間眠りの中に落ちていった。
……………
………
……
…
ハッ!
ワタシはガタンという衝撃で目が覚めた。
もの凄くイヤな夢を見ていたような気がする。
短い間だったけど、額に冷たい脂汗が浮いている。
バッグの中からハンカチを取り出すと、額を拭いて周りを見回した。
確か、座席の前に子供が立っていたような気がしたけど、どこかの駅で降りたんだろう。
今時の小学生も大変だよね。
良く朝の満員電車の中で、ランドセルを背負った小学生を見かける事がある。
きっと、都内の私立の小学校に通ってるんだろうけど。
ワタシはそこまでして、自分の子供をイイトコの学校に入れる気はないなぁ。
親は子供を名門とか有名な私立の学校に入れてご満悦かもしれないけど、毎日大変な思いして学校に通うのは子供なのにね。
そんな事を考えているうちに、電車が駅の構内に滑り込んだ。
ああ、降りなくちゃ。
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