第一章  楽屋裏

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第一章  楽屋裏

 歓楽街の外れ。コンクリートの打ちっぱなしは、すす汚れ。普通にまっすぐ入れればいいのに、気取って上がったり下がったりする階段だらけのバリアフル建築。ライブハウスの搬入口のアスファルトは雑草が根性を見せていた。蹴飛ばされたゆがみでまともに座っているのがやっとのアルミバケツの吸い殻入れは黒い雨水があふれそうになっている。  Aがタバコをフカシていた。吸っていない。肺がんが怖いから。くわえている俺超かっこいいで吸っているふりをしているだけだ。四千円のヒョウ柄ライダースジャケット。合皮のぴっちりパンツは、ところどころハゲかかっている。買った当初は、せっせと磨いていた黒ブーツも長いこと手入れをしていなくて染みだらけだ。五千円で買ったものに、千円の靴墨を使う理由が見つからなくなってから手入れはしなくなった。靴底がめくれたら、買い直すだけだ。一流ブランドで買ったら、百万二百万する格好と百メートル離れたら見分けがつかないを目指していた。全部で一万円ちょっとくらいで。百メートル離れたら二十年前のガンズ・アンド・ローゼズのアクセルローズだ。。     
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