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百円ショップで買った薄茶色のサングラス。伸びた地毛に、染めた髪がおされている。
茶色と黒のグラデーションを黒いカラメルにかけて、ぷりん頭とローカルでは呼ばれる。
「俺も禁煙しなくちゃなぁ。俺がガキのころ見上げたロックは、酒とタバコとコーヒーだった。でもよぉあんたがいっちまって、怖くなったんだ。あんたは、女の腹の上で死ぬんだと俺はおもってた。これが俺の最後の一本だ。清志郎、あんたおとむらいの線香なんかより、タバコの火だよなぁ」
ライブハウスの入り口わきのガラスのショーケースに守られた忌野清志郎のポスターがある。Aは色あせた忌野清志郎の唇に、タバコの吸口を押し当てた。煙を吹きかける。
Aは、地方の何もないローカル駅のトイレで、もうおまえ、家に帰るだけなのに、鏡の前で十分も二十分も粘れる男だった。
「Aさん……」
自分に酔いしれているAの独り言を、中途半端なタイミングで聞いてしまった男がいた。
Bだ。本側のライダースに背には、咆哮するトラの刺繍。本皮のパンツに、ブーツ。
どれも輸入物のバリバリのロッカースタイル。全部で百万はくだらないだろう。
剃り上げたスキンヘッドに、テープで作ったギンギンに尖らせたモヒカンを載せている。
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