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そして月日は流れ
何度目かの春がおとずれるーー。
※
日曜日の午後。
あたたかな日差しを受けながら、公園のベンチに座っていた俺は顔を上げた。
読んでいた文庫本のページに、ひとひらの花びらが舞い落ちた。
青空の下、綺麗に咲き誇る桜の木。公園で遊ぶ、子供たちの楽しそうな笑い声。
俺は文庫本を閉じて腰を上げる。携帯を確認すると、妻の美希からメッセージが届いていた。買い物が終わったから今から戻るね。そのメッセージに目を通して携帯を仕舞う。
顔を上げた俺は、他の子と混じって遊んでいた息子を見つけ、手を大きく振りながら息子の名前を呼んだ。
「ーー圭介、おいで。そろそろ帰るぞ」
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