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すると狐がふんと笑った。
「己の命がかかっている訳ではないゲームに、参加する理由も意味もないと思うだろう?だが、貴様たちゲームの参加者の命の代わりに、現実世界の生徒たちの命がかかっておるのだ。
異空間に存在する『ナンバー』はお腹が空くと、夜船高校の生徒たちを1人、また1人と攫って喰らう。聞いた事はないか?夜船高校では、1年ほど前から生徒の失踪事件が多発していると」
俺はハッとした。
転校初日に、教師から失踪事件についての説明があった。犠牲者は俺のクラスの女子生徒だった。もう1週間も家に帰っていないと…
いや待て、これは夢だ。現実とは関係ない…はず。
「つまり!貴様たちゲームの参加者が『ナンバー』を撲滅し、ゲームを終わらせない限り、夜船高校の生徒たちが次々と『ナンバー』の犠牲になってゆくのだ!ボクの考えたこのゲームを、貴様は終わらせられるかな?」
無邪気な子供のようにご機嫌な狐を、俺は半目で睨む。
「ボクの考えたゲーム?まさかお前、自分が神様だとか言うんじゃないだろうな。そのなりで?へなちょこぬいぐるみの癖に。つか、俺をそのゲームに参加させてどうするつもり、」
「貴様!神様に向かって何という無礼な!このクソっ!禿げてしまえ!」
「ちょぉっ、髪を食べるなっ!」
頭に向かってジャンプしてきた狐が、俺の髪の毛にかぶりついてぐいぐい引っ張ってむしゃむしゃ噛む。
夢なのにリアルな痛みだ、何なんだよ、早く覚めろ、覚めろ覚めろ覚めろ覚めろ…
「この姿は仮の姿なのだ。貴様たち汚らわしき人間共に、神であるボクの姿を拝めると思うな」
俺の頭からぴょんっと降り立った狐が、大きく口を開けてあくびをした。
「ふぁああ…。全く、無駄に喋りすぎたせいで眠くなってしまった。後の詳しい説明は貴様の仲間になる連中から聞くといい」
「おい…、ぅわ!?」
ぐにゃっと、足元の地面が蠢いた。
そしてズブズブと両足が沈んでいく。
な、何だこれ!?
「最後の『ナンバー』を殺してゲームに勝利しろ。では、ゲームスタートだ!」
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