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「サア、ボクヲ殺シテ、次ノゲームニ進メルカナ」
その瞬間、ぽっかりと空いたふたつの黒い穴が赤い光を放った。
リィィイイィン…
あの鈴の音が響く。
耳鳴りのようにキーンとする嫌な音と共に、視界がぐにゃりと歪んで渦を巻いた。
※
「ーー!」
気がつくと、俺は屋上に立っていた。
冷たい風が全身を叩き、視界いっぱいに青い満月が飛び込んでくる。
「秋君」
後ろから優姫の声がした。
振り返ると、そこには優姫しかいなかった。
どうやら今度は優姫と屋上に飛ばされたみたいだ。
「これは厄介な能力ね…」
優姫は長い黒髪を耳にかけ、眉を寄せて呟いた。
「そうだな…」
俺は苦笑する。
すると優姫が俺の後ろを見て「あ」と声を上げた。
見ると、屋上の隅に吉野の姿があった。吉野は俺たちに背を向けて、首を前に折っている。
「吉野!」
俺の呼びかけに、吉野は振り返らなかった。
様子が変だ。優姫と視線を合わせて不思議に思う。
その時、吉野が動いた。
前進して行くその先にはフェンスがない。
「え…?ちょ、吉野!」
まさか…
俺は慌てて走り出した。
吉野は止まらない。あのままだと落ちてしまう。
近づいた背中に向かって手を飛ばす。
肩を掴もうとした瞬間、フッとその姿が消えた。
「あっ…」
俺の口から漏れた小さな悲鳴。
どんっと、後ろから体を前に押された。
足元に地面はなく、どこか冷静な頭で落ちると思った。優姫の悲鳴に近い声が空に響く。
仰向けの状態で落ちていく俺を、上から吉野が見下ろしていた。
けれどその顔にいつもの無表情はなく、あの骸骨の子供のように吉野の顔はーー真っ白な骸骨だった。
…………
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