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自室の天井が目に入る。
外の眩しい光に、だんだんと意識が目覚めてきた。
「吉野...」
頭は少し混乱していた。目覚めたこの瞬間が1番夢か現実か分からなくなる。
骸骨の吉野と血みどろの吉野が、しばらく頭から離れなかった。
※
憂鬱な気分で廊下を歩いていたら、数人の女子が鼓の名前を口にして盛り上がっていた。彼女たちが見ているのはファッション雑誌だ。
「...鼓って、本当にモデルなんだな」
「そうだよ」
「うわっ」
後ろから急に鼓の声がかかって、思わず声をあげた。
「おはよう、秋君」
「ああ...、おはよう鼓」
相変わらず完璧な笑顔だ。
学校で会話をしたのはこれが初めてになる。
「あの後は結局ゲームオーバーだったよ。僕は吉野君と一緒だったんだけど、全く口を利いてくれなくてね。僕は彼に嫌われているみたいなんだ」
と言ってしょんぼりした。俺は何も言えなくて苦笑する。
吉野は鼓と一緒だったのか...なら、俺が屋上で見た吉野は一体...
「あ、鼓君だ!」
鼓に気づいた女子たちに、鼓はあっという間に囲まれてしまった。
「おはよう鼓君!」
「鼓君が載ってた雑誌、私買ったよ!」
「あ、私も私も!」
女子たちの猛アピールに、鼓はキラキラした笑顔を浮かべる。
「嬉しいなぁ、みんなありがとう」
きゃー!と一斉に悲鳴が上がった。
後方へ静かに避難した俺の真横に、急に現れた清香が並ぶ。
「おはよ、秋君」
「おはよう、清香」
「昨日のことは優姫から聞いた。私は協力出来なかったけど、なにはともあれ『ナンバー』を倒せて良かったわ。今回もありがとう」
真面目な顔でそう言った清香は、鼓のモテぶりを見て呆れ顔になる。
昨日のことを思い出してしまった俺は、なんとも言えない気持ちになって清香から目をそらした。
この様子だと、俺にキスをした記憶はないんだろうな...。
「秋君、昼休みにメンバー全員で集まりたいんだけど、いい?」
「ああ、大丈夫だ。作戦会議とかか?」
「それもあるけど、そろそろ調べた方がいいと思って」
清香は困ったような顔を見せる。
「...吉野のことか」
「ええ。もしかして、秋君はもう彼のことについて調べたの?」
「いや...」
俺は言い淀んで黙った。
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