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清香から聞いた話を思い出して、俺は無意識に警戒していた。
明が指をさす。
「ジュース、買わないんですか?」
「あ…」
明は不思議そうに俺を見ている。
俺は慌ててボタンを押して、コーラのペットボトルを取り出して横に退いた。
明が自販機の前に立つ。
「先輩は、何か部活はしてますか?」
明は尻ポケットから財布を抜きながら俺に問いかけた。
「いや、入部してないよ。けど、前の学校では剣道部だったな」
「へぇ凄いや。僕、運動音痴なんで羨ましいですよ。この学校には剣道部はありませんから、残念ですね」
明は気さくな笑顔を見せる。初対面の時とは大違いな態度だ。
お金を入れて、指先がボタンを選ぶ。
「そういえば、前に僕が鳥居の巫女の話をしましたけど、結局先輩たちはどうしてあの話を聞きたかったんですか?」
その横顔が、急に冷たい表情に変わった。
「っーー…、いや…別に、深い理由はないんだけど…」
ぞくりとした悪寒が背筋を這い上がった。空気が冷たくなり、周りの音が消えた。時間が止まったかのようだ。
そしてほんの一瞬、体が動かなくなる。
ーーーーガコンッ
その音で、金縛りが解けた。
明はペットボトルを取り出す。
なんだ…?今の…
「じゃあ僕はこれで。失礼します」
にこっと笑った明が俺の真横を通り過ぎていく。
その時、足元に何かが落ちるかしゃんという音が響いた。
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